日本を代表する作家である故宮沢賢治さん。あなたは今までに宮沢賢治さんの作品を読んだことがあるだろうか。
私の住んでいる地域では、国語の教科書(光村図書)で宮沢賢治さんの作った「やまなし」という作品に触れるので、宮沢賢治さんの作品に必ず出会うことになる。「やまなし」は、自然の中での生と死、そして命の循環を描いた作品だ。物語が春と秋に分けられた二つの場面で展開される。どちらも2匹のカニの兄弟が主人公でその成長を感じさせる描写と、自然を大切にしていた宮沢賢治さんの心が表れている。自然界の「美しさ」「厳しさ」「生命の尊さ」を詩的に表現した作品である。話に出てくる「クラムボン」とは何だろうと考えたり、宮沢賢治さん独特のオノマトペを味わえたりするのも、この「やまなし」のよさと言える。
宮沢賢治さんの作品の中で特に有名なものと言えば、「銀河鉄道の夜」だろう。「銀河鉄道の夜」は、主人公ジョバンニが夢の中で体験する幻想的な旅を描いた物語。貧しい生活を送るジョバンニは病弱な母親を支えながら、日々の孤独に悩んでいく。そんな生活の中、唯一の支えが親友のカムパネルラの存在。ある夜、銀河を走る不思議な鉄道に乗り込み、さまざまな場所や人々に出会う。この旅でジョバンニは、天国や死後の世界について身をもって感じ、命や愛、幸福の意味について深く考えるようになる。途中でカムパネルラも同じ列車に現れるが、彼の姿はやがて消え、ジョバンニはいつの間にか現実の世界に戻っている。旅が終わり、カムパネルラが実際川で溺れて死んでしまったことを知ったジョバンニは、友の死を受け入れつつ、真の幸福とは“他者への愛と奉仕”であることを悟る。この物語は、夢と現実、生と死、そして人間の存在意義を哲学的に探求する作品だ。本当に素敵な作品なので、少し短く書かれている本や“マンガで読破”シリーズ等で読んでみてもいいかもしれない、超絶オススメ本だ。
私が教師をしていた頃、小学校6年生の国語で「やまなし」の作品を扱った後に「イーハトーヴの夢」という“あとがき”のようなページがあった。その文中では、宮沢賢治さんがどのような人なのかが見えてくる。宮沢賢治さんは明治時代に岩手県の花巻という地に生まれた。家は裕福だった。性格はおとなしく、一人遊びが好きなタイプだったらしい。当時、天災によって農作物がとれない年が多くあったことから、「農業のために一生を捧げたい」という志をもつようになった。盛岡にある農学校を優秀な成績で卒業した後は、花巻にできたばかりの農学校の先生になる。
とても素敵な言葉がある。「苦しい農作業の中に、楽しさを見つける。工夫することに、喜びを見つける。そうして、未来に希望をもつ」。そして、続いてこんな言葉も。「暴れる自然に勝つためには、みんなで力を合わせなければならない。力を合わせるには、たがいにやさしい心が通い合っていなければならない」。その”優しい心”を育ててもらおうという気持ちから、宮沢賢治さんはたくさんの詩や童話を作ったそうだ。
先に述べた「銀河鉄道の夜」は、宮沢賢治さんにとって大切な妹を亡くした時に書いた作品。当時、悲しみのどん底だった心で、精一杯「幸せとは何か」を求め、やっとたどり着いた答えが作品の中にあると言えよう。
『人間が人間らしい生き方ができる社会って何だろうか。いや、人間だけでなく動物や植物とも心を通わせられる世界』。そんな世界が宮沢賢治さんの夢だった。しかし、時は大正そして昭和へと進み、宮沢賢治さんの理想とは違う方向へと進んでいく。何でも「速さ」や「合理性」を求めていく時代。
理想を求めて生きていく宮沢賢治さんにも病魔が襲う。体は徐々に弱くなり、肺炎にもかかってしまう。亡くなってしまう前日の晩に宮沢賢治さんを訪ねた客がいた。肥料のことを教えてもらいたかったのだ。宮沢賢治さんはそんな客のために、丁寧に自分のもっている知識を教えた。
終わることのない永遠のテーマ“幸せとは何か”。
理想を求め、自分らしくあり続けた宮沢賢治さんは幸せだったんだろうと、勝手ではあるが想像する。幸せは人それぞれ違うと言ってしまえばそうなのだが、理想と現実を行ったり来たりしながら、われわれも少しずつ心を磨いていきたいものである。(※今回は「イーハトーヴの夢」からかなり内容を抜粋しております)



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