国語の教科書には“物語文”と“説明文”があるよね。まったく違う種類の読み物だ。物語文だと「登場人物(特に主人公)の心情」をとらえることを中心として授業が進むし、説明文だと「筆者の考えや伝えるために筆者がしている工夫」を見つけながら、それに対する自分の考えを書くこともあるね。あなたはどちらが好きだろうか。私が小学校の先生をしていた頃は、子どもたちは“物語文”の方が興味をもって取り組んでいたように感じる。とはいえ、説明文も新しい知識や考え方を提供してくれるので、「確かにそうだなぁ…」と思える発見が多いのも魅力だ。
世の中では、“物語文”や“説明文”などという言い方はしないが、物語文のことを“小説”や“文庫”と呼び、説明文を“新書”と呼ぶことが一般的だ。「新書と文庫、どっちが好き?」と大人の人に聞かれた時に、「どういう意味ですか?」と言っていてはカッコ悪い(あなたが中学生以上ならね)。ぜひ、学校の教科書に載っている物語文や説明文という狭い世界から飛び出して、さまざまな新書や文庫に出合ってほしい。
大人になってくると、”実用的”つまり自分のためになる知識を得たがるがゆえに、ついつい新書(説明文の方ね)ばっかり手に取ってしまう。新書は目次を見ると、たくさんの項目が書かれて内容が短く切られているから、短い時間でも読みやすい。しかし、逆に集中して“没頭する”というよりは、「ここまで読もう」と割り切って読むという読み方の人が多いだろう。一方、小説は300ページくらいある本だとしても、「目次に2章しか書かれていない…」なんてことがよくある。1章150ページくらいあるのだ。もちろんその中にも場面ごとに区切られているから分けて読めるようになっているが、小説はその世界に入り込んで、本を読んでいることすら忘れてしまうくらい“没頭する”ことができる素晴らしいものだ。
小説の素敵なところって何だろう(以前のブログとネタがかぶっていたらゴメン)。私は何と言っても“疑似体験”かなと思う。本を書くために恐ろしいほどの情報を調べて作者は書いているので、情景描写が実に細かく、われわれ読者は想像しやすくなっている。細かいからこそ、その主人公に感情移入しやすくなるし、本当に知らない世界を知れるのも素敵なところだ。私が今までに読んだ本で一番印象に残っているのは、司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』だ。400ページ×8巻の超大作だが、竜馬のカッコよさだけでなく、その時代のことも知ることができて、まさに“疑似体験”そのものだ。もうかれこれ15年ほど前に読んだっきりなので、断片的にしか覚えていないが…、みんなに問題を出そうと思う。『竜馬はなぜ、当時犬猿の仲だった薩摩藩と長州藩を仲直りさせ、“薩長同盟”まで結ばせることができたのだと思う?』もちろん理由はいろいろあるだろう。私もその時代に竜馬の近くで生きていた人間ではないから、正しい答えは知らない。でもこの本から知ったことや、それまでにもっていた知識などが融合して、自分なりの答え(考え)をもてるというのは、実に人生を楽しく豊かにするものだと思う。“持論がある”というのは尊いことだ。
ちなみに私の見解だと、竜馬が薩長同盟を結ばせたのには理由が2つあると考える。
1.タイミングがとても良かったこと
当時長州藩は、政敵として幕府そして朝廷(天皇)からも信頼を失っていた。しかし、そんな長州藩でも今は絶対に江戸幕府を倒して新しい時代を作らなければならないことを知っていた。ただ予断を許さず、2回目の長州征討の幕府軍がもうすぐやってくる…武器が欲しい。ちょうどそんな時に当時仲の悪かった薩摩藩も、武器はあるものの不作によって米がない。どうしたものか…と困っていた。そして薩摩藩も江戸幕府を倒さなければいけないという思いがある中、仲が悪いとはいえ、長州藩との利害関係が一致してしまったのだ。しかも竜馬は「海援隊(のちに亀山社中)」という組織で船を使って商売をするということを始めていた。そんな超絶ベストなタイミングが薩長同盟を生み出したのだ。武器を薩摩藩から長州藩へ竜馬の船で運び、長州藩からはその見返りに米を薩摩藩へ届けたのだ。
ただ、この話は歴史をそれなりに知っている人であれば分かることだ。もう一つが私の見解。
2.武芸に秀でていたこと
当時、武士が世の中を仕切っていた。泰平の世の中であったとはいえ、武士がすることと言えば「武芸」と「学問」。学問はあまり得意ではなかった様子の竜馬だが、剣道がめちゃくちゃ強かった。土佐藩を出て、江戸に剣術留学をしている。しかも江戸で竜馬の剣道の流派“北辰一刀流”(という名門)の代表として剣道の大会で優勝したのだ(つまり日本一)。江戸の末期とは言え、まだまだ武芸が大切とされていた時代。そこで竜馬の名が世の中に知れ渡ったことが、後々の人脈へとつながった理由でもあろう。竜馬の師匠となる勝海舟や、土佐藩以外の主要人物と出会えたのも、竜馬が武芸に秀でていたからだろう。
このように、人生を楽しく豊かにする読書。とくに今回は“小説”だ。面白い登場人物に影響を受けると、自分の可能性が広がるかもしれないよ。ちなみに、私は今日から『成瀬は天下を取りにいく』という小説を読み始めた。この成瀬という女の子がいい意味でぶっ飛んだ主人公で、これからどんな疑似体験をさせてくれるのか楽しみである。



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