決意?環境?

生き方

 先日、教育系の講演会に足を運んでみた。ほとんどの人が知らない人かもしれないが、ここで紹介したい。名前は式町水晶しきまちみずきというバイオリニストだ。彼は、生まれつき障がいをもっている。脳性麻痺のうせいまひという病気にかかり、小脳という脳の一部が、人の半分以下の大きさらしく、そのことから力の加減がとても難しいらしい。紙コップをつかむとつぶしてしまっていたと例を挙げて教えてくれた。

 本人はバイオリンを4歳から始めた。でもバイオリンってとてもお金がかかるイメージはないだろうか。そもそもレッスンをしてくれる人自体が希少で、その分どうしてもレッスン料が高くなる、そんなイメージだね。では、式町さんは裕福な家庭に生まれたのか?というと、決してそんなことはなかったという。式町さんは生まれてすぐにご両親が離婚され、それ以降今まで、母親そして母方の祖父母と一緒に暮らしている。父親がいないのもあり、経済的には逆に恵まれていなかったようである。しかしその分、母親や祖父母からの愛情を受けたことで「寂しい思いはしなかった」と素敵なことを言われていた。

 そんな式町さんだが、6年生の時に学校を転校し、行った先のクラスで残念なことにいじめに遭った。小4まで特別支援学級にいた式町さん。小5で初めて通常学級に行き、その時は周りの友達にとても親切にされて、それまで思っていた通常学級への不安がなくなったらしいのだが、小6で転校した先の学校でとても悲しい思いをし、その時に「人って優しくないんだな」と感じたと言われていた。

 辛い思いをした式町さんは、母親に「学校を休んでもいい?」と思い切って伝えた。すると「休んじゃう?全然いいんじゃない♪」とむしろ休むことを後押ししてくれるように言ってくれたらしい。お母さんは日々一緒に過ごす中で、式町さんの変化に気付いていたらしく、そうやって声をかけてくれたのだ。

 いじめのこともあり、中学校は違う学区の所に進学したのだが、そこでは、「勉強・トレーニング・バイオリン」ばかりの生活だったそうだ。勉強は「いじめてきた奴らをとにかく見返してやりたい!」という思いだったとのこと。本人も、『当時はかなり卑屈になっており、友達からかけてくれる遊びの誘いは全て「NO!」と返事していた』と回想していた。

 そんな中学校生活にも転機が訪れる。2011年3月11日。そう東日本大震災だ。当時中学2年生だった式町さんは、翌年度中学3年生になり、被災地にバイオリンを弾きに行ったのだそうだ。そう、被災した現地の人たちを励ましに。でも、式町さんは逆に「これからも頑張ってね」と励まされて、そこから『僕はもっと変わらなきゃ』と心に誓ったらしい。

 2013年、16歳で初のコンサート(チャリティー)を開き、そこから何度もコンサートを開いたり、メジャーデビューを果たしたり、東京パラリンピックの閉会式の演奏をしたり、今回のように講演活動をしたりと、とても精力的に活動して今に至る。初めてのコンサートの時に、式町さんは「僕は障がいをもって生まれてよかったんじゃないのかなぁ」と考えたらしい。今26歳。自分と向き合いながら成長し続ける式町さんの、さらなる活躍が本当に楽しみだ。

 式町さんは、講演の中でいくつかのメッセージを送ってくれた。

 「役割を分担してほしい」…一人では全部かかえこもうとせず、自分が力を向けることを決めてほしい。
 「がんばることより、がんばりすぎないこと」…やはり、続けることが大切だから、がんばっていっぱいいっぱいにならないように。

 最後に。
 私は、この講演会の終わりに少し後悔をした。質疑応答の時間に聞きたいなぁと思ったことを聞けなかったからだ。それが今回のテーマだ。「今こうしている自分をつくってる要素は自分の“決意”の大きさからなのか。または、母親や周りのが人生のターニングポイント(分岐点)にかけてくれる後押しの声などの“環境”の部分が大きいのか」。おそらく式町さんの口からは「そのどちらもです」という答えが返ってくるのだろうと思う。そこにタイミングを含めた“運”なども関係するのだろうが、運は自分ではどうすることもできないからね。

 講演会って、本当に自分の世界を広げてくれてステキ。“温度感”が伝わってきていいなぁと思う。

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